チケットノルマが存在する劇団の公演には出演したくない

「またチケットノルマの話か……」。

舞台出演が決まって嬉しい気持ちも束の間、提示される「チケットノルマ〇枚」の文字。あなたも小劇場界隈で活動する役者なら、このチケットノルマ問題に頭を悩ませたことが一度や二度はあるのではないでしょうか。

「本当はチケットノルマのある公演には出演したくない」

「でも断ったら次の仕事が来なくなるかも」

「そもそもチケットノルマ自体、法律的にはグレーなんじゃないの?」

そんなモヤモヤを抱えながらも、結局はチケットノルマを受け入れてしまう。小劇場で演劇を続ける限り、このチケットノルマという壁から逃れることは難しいのが現状です。

しかし今回はあえて、チケットノルマについて本音で語り合ってみたいと思います。チケットノルマを断る方法を探りつつ、そもそもチケットノルマとは何なのか、小劇場の演劇界におけるチケットノルマの意味を深掘りしていきましょう。

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チケットノルマの実態と役者が感じる違和感

チケットノルマとは何か?小劇場演劇に根付く制度

チケットノルマとは、出演者が自ら一定数のチケットを販売する義務を負う制度です。小劇場の演劇公演では当たり前のように存在するこのチケットノルマ。あなたも経験があるでしょう「今回は1人20枚お願いします」と告げられる瞬間の、あの何とも言えない気持ちを。

チケットノルマの枚数は公演規模や劇団によって異なりますが、小劇場の場合、10枚から30枚程度が一般的でしょうか。このチケットノルマをクリアできないと、足りない分を自腹で購入することになります。いわゆる「チケットノルマの自爆」ですね。

演劇をやればやるほど、チケットノルマのプレッシャーに押しつぶされそうになる。それでも舞台に立ちたいから、チケットノルマを受け入れる。気づけばチケットノルマのために必死で友達や知人に声をかけ、SNSで拡散し、ときには家族にまでチケットノルマのノルマを課す。そんな自分に嫌気がさしたことはありませんか?

なぜチケットノルマはなくならないのか

「チケットノルマなんてなくなればいいのに」

そう思う一方で、チケットノルマが小劇場の演劇界から完全に消えない理由も理解しておく必要があります。

小劇場での演劇公演は、多くの場合、予算が非常に限られています。劇場費、照明音響スタッフの人件費、宣伝費…これらを賄うために、チケットノルマによる一定の収入保証が必要という側面があるのです。

また、チケットノルマには「集客への責任を出演者全員で共有する」という意味合いもあります。チケットノルマがあるからこそ、各出演者が積極的に宣伝活動を行い、結果的に多くのお客様に演劇を観てもらえる。そう考えれば、チケットノルマは単なる負担ではなく、公演成功のための仕組みとも言えるでしょう。

チケットノルマの違法性について考える

ここで気になるのが、チケットノルマの法律的立場です。実はチケットノルマは、フリーランス法などの観点から見ると、違法性を指摘されるケースもあります。

フリーランス法では、発注事業者に対して、受託事業者に不当に負担を強いることを禁止しています。チケットノルマのように、出演料とは別にチケット販売ノルマを課し、それを達成できない場合は自腹購入を強いるという行為は、この法律に抵触する可能性があるのです。

しかしながら、小劇場の演劇団体の多くは、企業のような明確な上下関係ではなく、メンバーによる共同体として運営されています。誰かが上司で誰かが部下という関係ではなく、それぞれが対等な立場で作り上げる演劇。そんな共同体の中で、「チケットノルマは違法だから私は負担しません」と主張することは、はたして適切なのでしょうか。

チケットノルマとの向き合い方と断る方法

チケットノルマを断る前に考えるべきこと

チケットノルマを断りたい気持ちは理解できます。しかし、その前に一度立ち止まって考えてみてください。チケットノルマが存在しない演劇公演に出演したいということは、言い換えれば「集客の責任を負いたくない」ということです。しかしチケットノルマがないということは、集客が難しい公演である可能性も否定できません。つまり、あなたの演技を見てくれるお客様も少ないということになりかねないのです。

舞台はお客様あってのもの。どんなに素晴らしい演劇でも、観客が少なければその作品の持つ力は半減してしまいます。チケットノルマがあるからこそ、多くのお客様に演劇を届けられるという側面も、忘れてはいけません。

また、劇団は共同体であることが多いという現実も重要です。あなた一人だけがチケットノルマを避けたいと主張するのは、他のメンバーとの関係性の中で自分勝手と映る可能性もあります。「あの人は自分のことしか考えていない」と思われれば、今後の活動に支障をきたすかもしれません。

そもそも、あなたは自分だけが気持ちよく演劇ができればそれでよいと思っているのでしょうか? もしそうなら、自分で責任を持って一人芝居でもやってみればいいのではないでしょうか。他人と共に創り上げる演劇においては、ある程度の相互扶助や負担の分担は避けて通れないものです。

建設的にチケットノルマと向き合う方法

とはいえ、あまりにも高額なチケットノルマや、現実的に達成不可能なノルマを課せられる場合もあります。そんな時は、建設的な方法でチケットノルマと向き合うことも大切です。

まず、チケットノルマの設定根拠を確認してみましょう。「なぜこの枚数なのか」「その内訳はどうなっているのか」を理解することで、納得感が生まれることもあります。もし不合理的だと感じたら、感情論ではなく具体的な数字や事実に基づいて話し合うことをおすすめします。

また、チケットノルマを単なる負担と捉えるのではなく、自分を売り込むチャンスと前向きに考えることもできます。チケットノルマのために知人や友人に声をかけることで、あなたの演劇活動を応援してくれるファンが増えるきっかけにもなるのです。

さらに、SNSを活用した効果的な宣伝方法を研究したり、他の出演者と協力して集客イベントを企画したりと、チケットノルマ達成のための工夫を凝らすことで、むしろ演劇人としてのスキルアップにつながる可能性もあります。

どうしてもチケットノルマを受け入れられない場合の選択肢

それでもどうしてもチケットノルマを受け入れられない場合、いくつかの選択肢があります。

一つは、チケットノルマのない劇団を探すことです。確かに少数ではありますが、チケットノルマを設けていない劇団も存在します。そういった劇団の公演に出演することで、チケットノルマのストレスから解放されるかもしれません。

また、チケットノルマがある劇団でも、出演者個人ではなく劇団全体で集客する仕組みを導入しているところもあります。個々のノルマではなく、チーム全体で目標を設定し、協力して達成を目指すスタイルです。こうした劇団を選ぶことも一つの方法でしょう。

あるいは、演劇の形態そのものを変えてみることも考えられます。従来型の小劇場ではなく、投げ銭方式の公演や、クラウドファンディングで資金を集める公演など、従来のチケット販売に依存しない形の演劇も増えてきています。

ただし、どの選択肢を取るにしても、完全に集客のプレッシャーから逃れられるわけではないことを理解しておく必要があります。どんな形であれ、お客様に来てもらわなければ演劇は成立しないのですから。

チケットノルマを巡る複雑な思いと演劇人としての覚悟

チケットノルマの本質を見極める

チケットノルマについて深く考えると、それは単なる負担や制度以上のものに見えてきます。

チケットノルマは、観客と演劇を結ぶ架け橋の役割も果たしています。チケットノルマがあるからこそ、出演者は必死で知人友人に声をかけ、その結果、演劇に馴染みのなかった人たちが劇場に足を運ぶきっかけになることも少なくありません。「友達が出るから」と来たお客様が、演劇の魅力にハマって常連になる。そんなケースも実際にあるのです。

また、チケットノルマは演劇界における一種の互助システムとも言えます。観客動員が難しい小劇場の演劇公演を支えるために、出演者自身が集客に協力する。これはある意味で、演劇文化を維持するための知恵とも解釈できるでしょう。

もちろん、チケットノルマが過剰になったり、搾取的になったりするケースは問題です。しかし、チケットノルマの存在自体を全否定するのではなく、その本質と意義を理解した上で、より良い形を模索していくことも大切なのではないでしょうか。

演劇を続ける覚悟とチケットノルマ

演劇、特に小劇場での活動を続けていくには、それなりの覚悟が必要です。チケットノルマもその覚悟の一部と言えるかもしれません。

お金を払って演劇を観るという行為は、ある意味で贅沢なものです。特に若い世代では、演劇を観たことがない人も増えています。そんな中で、小劇場の演劇公演に人を集めるのは至難の業。チケットノルマがあるからこそ、その難しさを実感し、集客の大変さを理解することができるのです。

また、チケットノルマを通じて、自分の演技にどれだけの価値があるのかを試されているという見方もできます。「この役者が出演するから観たい」と思ってもらえる存在になれば、チケットノルマは自然と達成できるもの。つまり、チケットノルマは自分自身の力量を示すバロメーターの一つとも言えるでしょう。

チケットノルマが嫌なら辞めればいいという乱暴な意見もありますが、そう単純なものでもありません。しかし、チケットノルマがあるから演劇を続けられないというのも、少し違う気がします。大切なのは、チケットノルマとどう向き合いながら、自分なりの演劇人生を歩んでいくかということではないでしょうか。

より良い演劇環境を作るために

チケットノルマの問題は、一人の役者が個人で解決できるものではありません。劇団全体、そして小劇場界隈全体で考えていくべきテーマです。

もし現在所属している劇団のチケットノルマに疑問を感じるなら、感情的に批判するのではなく、建設的な提案をしてみてはいかがでしょうか。「チケットノルマをなくそう」ではなく、「集客のためにみんなでできることを増やそう」といった前向きな提案なら、受け入れられやすいかもしれません。

また、SNSの活用や動画配信など、新しい集客方法を提案することも有効です。従来の、知人友人に声をかけるだけではない、多様な集客チャネルを開拓することで、個人のチケットノルマ負担を軽減できる可能性があります。

さらに、観客にとって魅力的な演劇作品を作ることの重要性も忘れてはいけません。結局のところ、作品そのものが素晴らしければ、口コミで観客は増えていきます。チケットノルマに追われるあまり作品のクオリティが疎かになれば、本末転倒です。

演劇人は創造者であると同時に、自分たちの作品を届ける営業マンでもあります。その両立は確かに難しいけれど、だからこそやりがいがある。そう捉えることもできるのではないでしょうか。

まとめ

チケットノルマは確かに負担です。ときには理不尽に感じることもあるでしょう。しかし、小劇場の演劇公演におけるチケットノルマには、単なるノルマ以上の意味があることも事実です。チケットノルマがあるからこそ、多くの人に演劇を届けられる、チケットノルマがあるからこそ、集客の大変さを実感できる、チケットノルマがあるからこそ自分の力量を試される。

もちろん、チケットノルマが違法性を帯びるケースや、あまりに高額なチケットノルマを課す劇団には注意が必要です。しかし、適切な範囲でのチケットノルマであれば、それは演劇文化を支える一つの仕組みとして捉えることもできます。

もし今、チケットノルマに悩んでいるなら、まずは冷静に状況を分析してみてください。そして、もし可能なら、建設的な対話を通じてより良い形を模索してみてはいかがでしょうか。

それでもどうしてもチケットノルマを受け入れられないなら、自分に合った環境を探すのも一つの選択肢です。ただし、その場合も、自分だけが気持ちよく演劇ができればいいという姿勢は、長続きしないかもしれません。

演劇は一人ではできません。多くの人と関わり、支え合いながら創り上げるもの。チケットノルマもまた、その関わりの中で生まれた制度です。その本質を理解した上で、自分なりの向き合い方を見つけていくことが、小劇場で演劇を続ける役者には求められているのかもしれません。

チケットノルマの有無に関わらず、あなたの演劇活動が充実したものになりますように。そして、多くのお客様にあなたの演劇が届きますように。

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