小劇場の公演を企画する側なら、劇場代や小屋代の負担に頭を悩ませます。限られた予算の中で、どこにお金をかけてどこを削るか。これは小劇場で活動しているほぼすべての劇団がぶつかる壁です。特に公演費用の大きな部分を占める劇場のレンタル料は、なんとかしたいと誰もが思います。
小劇場のチケット予約管理に便利なクラウド型チケット予約システム トロクレチケットはこちら >>なぜ小劇場のレンタル費用は高いのか
小劇場のレンタル費用が高く感じられるのには、いくつか理由があります。劇場という施設は、大小にかかわらず運営に必要な固定費がかなりかかります。電気代や空調費、人件費、設備維持費は、客席数が少なくても発生します。特に設備維持費は劇場規模に関係なくかかるため、小劇場ほど一席あたりの負担が高くなりやすいのです。
また、小劇場の収容人数は50人から200人程度と少ないです。一回の公演で得られるチケット収入には限りがあります。ところが劇場の一日あたりのレンタル料は、三万から十万円程度でも、公演期間が一週間から二週間になると総額で数十万円に跳ね上がります。劇団の運営資金がチケット収入と少ない助成金や自己資金でまかなわれていることを考えると、この負担は軽くありません。
さらに近年は劇場そのものの維持費も上がっています。老朽化した施設の修繕費が、レンタル料に転嫁されやすいです。こうした事情を踏まえると、劇場代や小屋代が高いと感じるのは気のせいではなく、現状の国内の不動産を取り巻く環境が原因です。
小劇場の高い劇場代を下げる節約術
平日利用でコストを抑える
劇場のレンタル料金は、どの曜日に借りるかで大きく変わると考えると良いでしょう。多くの小劇場の劇団は、週末(土日)にあわせて公演日程を組みます。例えば日曜日の千秋楽がくるように公演日程を組むのです。そうするとおのずと各週末は多くの劇団が利用を希望することになるので、激戦となり、土日の利用料はどうしても高くなってしまいます。
一方で、劇場としては月曜日や火曜日が空いていることがあります。これは、例えば水曜と木曜に仕込みをし、金曜から日曜に公演をおこなうという劇団がいたとして、月曜日と火曜日には何も作業をしないから空いてしまうということです。つまり、月曜日と火曜日に借りると、週末よりも割安で借りることができる場合があるのです。公演の内容によって、あえてオフシーズンの平日を選ぶことで、同じ予算でリハーサル期間を長く取れたり、照明や音響の制作費に回せたりします。集客については、平日でも夜の時間帯を選べば問題ないケースが多いです。近年は平日夜の公演を好む観客も増えています。劇場のカレンダーを事前に確認し、料金体系を比較してみてください。
ロングラン利用で月曜日や火曜日にも借りて小屋代を分散する
逆説的に聞こえるかもしれませんが、公演期間を長く取ると一日あたりの負担を減らせる場合があります。劇場側も、二週間以上の長期契約で週単位や十日単位の割引を用意してくれることがあります。
つまり、月曜や火曜といった比較的集客が見込みにくい曜日も含めて借りることで、全体の小屋代を分散させるという考え方ができればよいのです。週末だけに集中するより、平日を挟んでゆったりとした日程を組むと、観客にも選択肢が増えるし、劇団員の負担も減ります。ロングランで生まれた余裕を、集客の工夫や作品の仕上げに使えば、結果的に公演全体の成功につながりやすいでしょう。
複数の劇団で長期に借りて小屋代を分散する具体例
さらに思い切った方法として、複数の劇団で共同して劇場を長期契約する手もあります。いわばシェアハウスの発想で、一つの劇場を期間単位で分割し、それぞれの劇団が別々の日程で公演を行います。
例えば、演劇祭等と銘打って、3つ程度の小劇団が連携して、一か月間の劇場契約を結ぶとしましょう。各劇団が10日間ずつ公演期間を割り当て、設備やリハーサル時間も共有します。劇場側から見ても一か月単位の貸し出しは安定した収入になるため、通常より割安な料金設定を受け入れてもらいでしょう。結果として、各劇団が単独で10日間借りるより、総額で数十パーセント安く済む可能性があります。
もちろん複数の劇団で調整するには、日程の打ち合わせや設備の引き継ぎなど、通常より多くのやり取りが必要です。しかしその手間を上回るメリットを考えてみましょう。特に同じ地域で活動する劇団同士なら、すでに顔見知りであることも多く、協力関係を築きやすいでしょう。互いの公演を観客に紹介し合えば、集客面でも相乗効果が期待できます。一人で抱え込まず、仲間と力を合わせる。小劇場ならではの知恵と言えます。
そもそも劇場を借りないという選択肢について
ときには劇場そのものを借りないという選択肢も考えてみる価値があります。演劇公演は必ずしも決まった劇場で行わなければならないわけではありません。創造力が求められる小劇場だからこそ、意外な場所での公演が新しい魅力を生むこともあります。
カフェなどの劇場ではない施設を使う
まず考えられるのは、カフェやバー、ギャラリー、コミュニティスペースなどの非劇場施設を借りる方法です。これらの施設は劇場よりはるかに安い料金で借りられることが多く、場合によっては飲食の売上の一部を施設側に支払う条件で、ほぼ無料に近い形で使わせてもらえることもあります。
実際にある劇団は、普段営業しているカフェを休業日に借りて、そのまま劇場に見立てた公演を行いました。客席数は30席ほどと小規模でしたが、観客と役者の距離が極めて近い独特の緊張感が好評で、連日満員だったそうです。照明は元々店舗にあったダウンライトをそのまま使い、音響はポータブルスピーカーで代用しました。
こういった方法の利点はコストを低く抑えられることです。観客にとっても、非日常的な空間で演劇を見る体験は新鮮に感じるでしょう。ただし後で詳しく書きますが、いくつか重要な注意点もあります。
野外に自前で仮設の劇場をつくって公演をする
もう一つの選択肢は、野外に仮設の劇場を自分たちで作るという、もっと挑戦的な方法です。公園や河川敷、広場などの公共スペースを借りて、テントや足場、パイプ椅子を設置し、その場だけの劇場を組み立てます。演劇界で有名なところでいうと、水族館劇場、劇団唐組、劇団どくんごなどを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。水族館劇場の場合は本格的な建築物をたてているので、大掛かりな仕込みが必要と考えられますが、劇団どくんごは日本各地を転々と身軽に公演でまわっています。野外の仮設劇場も、どこまで大掛かりに組むかはいろいろなパターンがありそうです。
野外公演の魅力は、自然光や風、周囲の環境音など、そのときどきで変わる条件を作品の一部として取り込める点にあります。劇場に縛られない自由さは、小劇場の実験精神を刺激してくれることでしょう。ただし天候に大きく左右されるし、騒音や近隣住民への配慮も欠かせません。計画段階で解決すべき課題は少なくないです。
消防法との兼ね合い
劇場以外の施設で上演する際に最も注意すべきは、消防法をはじめとする安全関連の法令です。特に避難経路の確保は絶対条件で、火災や地震の際に観客が安全に逃げられるよう、明確な誘導路を設定しなければなりません。
カフェやギャラリーといった通常の店舗は、飲食や展示を目的とした建築基準で作られています。そこに多数の観客を収容して上演を行うと、本来想定されていなかった人数が入るため、避難経路が足りなかったり出入り口が狭すぎたりする問題が出てきます。
野外で仮設劇場を作る場合も同じです。雨天時の滑りやすい地面や、暗くなってからの照明不足など、劇場では考えなくてよいリスクがたくさんあります。面倒だからといって安全管理を省いてはいけません。もしものときの責任は主催者である劇団が負うことになります。
劇場を使うことのメリット
こうしたリスクや手間を考えると、改めて劇場という施設のありがたみがわかります。劇場は上演専用の施設として設計されています。消防法や建築基準法をクリアしているのはもちろん、避難経路や非常灯、消火設備が標準で備わっています。照明用の専用電源や防音設備、空調も最初から整っていて、公演に集中できます。
観客の立場から見ても、劇場は安心して演劇を観るための約束事が備わった場所です。座席の配置や視界の確保、トイレの数や休憩スペースまで、細かい配慮が行き届いています。劇場以外の施設で公演をする場合、これらの期待値を超える体験を提供しなければならず、そのハードルは低くありません。
つまり劇場代が高く感じられても、その対価として得られる安全性と利便性、そして観客の信頼には大きな価値があるわけです。節約術を駆使して劇場を賢く使うことと、あえて劇場を使わないという選択の両方を、状況に応じて使い分けるのが良いでしょう。
高い劇場代に対するよくある質問
Q 劇場代の交渉は可能ですか?
場合によっては劇場代の交渉は可能な民間小劇場が存在します。特に公演日が目前に迫った直前の予約の場合、劇場側にも「どうせこの日程は埋まらないなら、安くても貸してしまおう」というインセンティブが働きます。たとえば一か月後に空きが出た日程なら、通常料金の7割から8割程度で貸してほしいと交渉してみる価値があります。
ただし人気の劇場や繁忙期の土日など、そもそも需要が高い日程では交渉の余地はほぼありません。長期的な信頼関係を築いている劇団であれば、次回以降の割引や設備の無償貸出などの形で協力してもらえることもあります。交渉の際は、単に値下げを要求するのではなく、長期利用やオフシーズンの利用をセットで提案するなど、劇場側にもメリットがある条件を提示した方が良いでしょう。
まとめ
小劇場の劇場代や小屋代が高いと感じるのは、多くの劇団が同じぶつかる悩みです。オフシーズンや平日を狙うこと、ロングランでコストを分散させること、複数の劇団でシェアすること。どれも今日から検討できる実践的な方法です。
劇場を借りないという発想の転換も有効です。カフェや野外など新しい場所での公演は予算を抑えられるだけでなく、作品に新たな風を入れるきっかけにもなります。ただし安全面と法令遵守だけはおろそかにできません。劇場の持つ安心感と信頼性は、やはり大きいです。
これから、自分の劇団の状況や目指す作品の方向性に合わせて、最適な選択肢を組み合わせましょう。皆さんの公演が、少しでも負担の少ない形で実現することを願っています。
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